ご存知の通り、日本のGDPは世界第3位であるものの、労働生産性(インプットに対するアウトプット)は2021年、OECD(経済協力開発機構)38カ国中28位と低く、経済成長率も下落傾向にあります。
今回は日本の大企業に14年勤めて感じたことについて整理しますが、経済評論家のように難しい言葉を使い批判をするつもりは有りません。
当たり前ですが、大企業が成長できれば多数派の給与が増えて余計な社会保障は搾取されにくくなるわけで、まずは事実を認識し、どこを目指していくべきなのかを自分事として考えるきっかけになればと思います。
人材の流動性がない
私を含め、一般的に日本人は一つの仕事を続けるので世界から不思議がられている、というより寧ろ、日本はそうだよね、と冷ややかな反応をされています。
キャリアアップのために3−5年で転職をするのがグローバル・スタンダードだからです。
特に日本では社員の仕事に対するエンゲージメントが6%とアメリカの31%(2019年時点)などと比べ圧倒的に低いのが特徴ですが、仕事がつまらなくてもなかなか辞められない、というのが真因だと思います。
「いつまでこの会社で働くの?」というのが世界の常識ですが、日系企業では転職の会話をすること自体難しい環境です。これには文化的、社会的な要因が複雑に絡んでいますが、他業界+他職種であっても挑戦権を与える仕組みがまずは必要だと思います。
人生100年時代だとか騒いでいる中で、30代で他業界+他職種への挑戦ができないなんておかしな社会だと思いませんか?成長と同時に価値観も変わるのが当然です。これこそ現代の奴隷制(Modern Slavery)と言えます。
スキルも当然大切ですが、それ以上に一人ひとりの気力・体力・ポテンシャルで採用する文化が浸透すればこういった問題が少しずつ解消されるはずです。
既得権益にしがみつく
破壊的なイノベーションが浸透しにくいのも、既存の業界団体が既得権益にしがみついているからです。社会に良いものを臨機応変に取り入れることができるのであれば、ウーバーやAirb&bなどのサービスはもっと柔軟に取り入れられたはずです。
確かに、国は国民の生活を守る義務がありますが、何でもかんでも時間をかけすぎて検討したところで、日本を変えたいと思っている起業家がやる気を無くすだけでなく、海外からも優秀な人材を集めることが難しくなってきます。対応が遅いだけならまだしも、優れたアイデアすら潰される、というところに根深さがあります。
年功序列で何とか地位と権力を手に入れた人たちは、わざわざ成功するのかもわからない新しいことをやって仕事を増やしたくないわけです。それよりも今の地位を確保して大きなトラブルなく定年を迎えることを目標としています。
人間は自分が一番大切で、相手のことを考えているふりをして自分のことしか考えない、という考えを前提とすると、アイデアを潰されない仕組みを考えていく必要があります。
そのためには、終身雇用や年功序列の廃止がマストであることは言うまでもなく、実力主義で昇進・昇格を行うべきであり、多数決で決まらない社会であるべきです。逆張りの発想で、多数決が取れないアイデアを採用する、というルールなど作って検証してみても面白いと思います。既存の株主は離れていくかもしれませんが、新しい価値観に共感してくれるステークスホルダーが集まってくるはずです。
多様性を受け入れない
日本は長年鎖国をしていたせいか、多様性を受け入れるのが苦手です。
外国の文化や商習慣への理解は言うまでもなく、日本人同士でもLGBTや女性への偏見、障害者への対応、もっと言えば、趣味・趣向が違うだけで差別されたりします。私は母子家庭だったのを理由に、変だとか軟弱だとか言われ悔しい思いをしてきました。
インド駐在をしていたときもそうでした。インド人はおかしいとかダメだと言って他国の文化や商習慣を受け入れることができない人が多く、やっていることがグローバルではない。仕事の付き合いも現地で日本人村を形成しており、まだまだ現地での関係を築けているとは言い難い。インド人が時間を守らない、すぐに言い訳(本人は言い訳と思っていません。)するのは当たり前です。そしてそういう文化を理解することがグローバルだと思います。
インド駐在のみならず私が香港大学MBAで体験しているように多様性を受け入れることは確かに大変ですが、上手くいけば最大の効果が得られる仕組みであることも実証されています。
多様性を受け入れられなければ人と違う発言をしようと思わなくなり、創造力やイノベーションはなくなります。SDGsとか言って世界の真似事をする暇があるのならもっと中身のあることをやったらどうかと思います。
さいごに
大企業だけでなく政府の関与が必要である点も多々ありますが、海外で世界の声を聞いている立場として、日本経済はオワコンだと思われるのは辛いです。
日本のホスピタリティや食事の素晴らしさが世界一であることは大変誇らしく、変われるだけの資源やポテンシャルがあることは間違い有りません。
あとは一人ひとりの気持ちの問題です。気持ちが変わればいずれGAFAMのような巨大企業が日本を復活させてくれると願いつつ、自分も新しいことに取り組んでいきたいと思います。