昨今インターネットの台頭もあり営業の種類は多様化しており、また、所属する業界によって扱う商品が異なりますが、既存顧客への営業と新規開拓営業の2つに大別されると思います。
営業のスキルというととっつきづらく、MBAでも細かく扱わない分野(交渉やマーケティングの授業はあります)ですが、コミュニケーションを避けてビジネスを拡大することはどんな業界でもほぼ難しいことと、信頼関係構築という観点でAIと代替するのが難しい分野であり、今後も残り続ける仕事であることにほぼ間違いは有りません。
営業といえば泥臭く給与も安いイメージがつきまといますが、顧客との関係を維持したい方は勿論、これから新規事業や起業を検討している方は特に参考にして頂ければと思います。
私は入社以来鉄鋼業界で造船・自動車・重工・その他数々の業界を担当してきました。窓口には重鎮たちが在籍しており若者はなめられて当然の業界です。
今回は、14年間の商社勤務の経験から得た営業のTIPSを3つ紹介していきます。
客の言うことを聞かない
確かに新入社員のときは右も左もわからず客の言うことを聞くのが仕事でした。
然しそもそも営業の目的は何でしょうか?
それは客の言うことを聞くことではなく、仕事を受注して会社に利益を還元することです。実際これがわからない営業パーソンが多いです。客とどれだけ仲が良いか自慢する人がいるかも知れませんが、では客と仲がいいことで会社にどれだけ利益をもたらしたか説明できる人がどれだけいますか?
基本的にはどちらかが得をすればどちらかが損をします。仲がいいほど立場を利用して、接待してほしい、できる限り値下げして欲しい、在庫を持ってほしいとかいってくるわけです。
極論ですが、嫌われなければ客と仲がいい必要は有りません。私は激しく交渉しすぎて何度も取引がなくなりかけましたし、これができたてのスタートアップであれば潰れてしまうでしょう。然し裏を返せば、その分損失を防いできました。周りの協力あってこそですが、結果的に予算も過達を続けることができました。
初めは本当に取引がなくなってしまうライン、本当に嫌われてしまうライン、短期的には良くても長期的にはどうなのか、などわからないと思いますのである程度の経験は必要です。
然しだんだんと自分の営業スキルで利益が出せていること、損失を減らせていることが楽しくなって来ます。
客のことを考える
客の言うことは聞かないが考えるって何だ、について解説します。
客の言うことを聞いて損を拡大していく必要は有りませんが、客が何を悩んでいるのか、どうして欲しいのかはとことん考えてください。あくまで会社は客からお金をもらって存続できています。お金がもらえるというのは、客にできない価値を提供していることの対価です。
よって、客の窓口として営業が悩みや問題点を理解できなければ会社全体として価値提供に繋がりません。例えば、いくら技術力が高くても客が求めていなければ売れないわけです。
法人客であれば対面で直接得られる情報の他に、財務状況や競合の動向、マーケットが今後どう動いていくのかなど、政治経済へのアンテナは高い方が良いです。(どちらかというとマーケティングの要素が強いので、興味のある方はマイケル・ポーターのファイブフォースやPEST分析、STP分析などを学んでみてください。)
要するに、自社の損することはしなくとも、客ことをよく理解して必要な情報が提供できるだけで価値があります。
私は客の言うことはなかなか聞きませんが、マーケットの分析をしてシンクタンクやOEMメーカーでも持っていないような情報を客に提供しに行っていました。
解決策は一つではないので色々考えてみましょう。解決策がないというのは考えてない証拠です。
余談ですが、政治経済への洞察が必要のない営業は面白くないばかりか、あまり潰しのきくスキルが身につきませんので早く辞めてしまいましょう。
一緒に楽しむ
最近はコロナ渦でオンライン会議が浸透し、効率化がより進んできた頃と思います。
私も1年以上在宅勤務を経験し、オンラインの気軽さを経験してきました。特にインド駐在中、デリーからチェンナイ出張のときは、1時間の打ち合わせをするのに朝4時に起きて夜遅くに帰宅する、という生活だったのがその場で事足りてしまうようになりました。ZOOM会議万歳です。
然し一方で、客との関係作りという観点ではなかなか難しいところがあります。経験上、周りの悪口から自社の内情など何でも話せる関係を築くためには仕事の垣根を超えた付き合いが必須でした。客と一緒に明け方まで飲んだくれたり、家に招待したりということをやってきましたし、幸い新入社員の時にそういうことを嫌というほど学ばせてくれた先輩がいました。
残念ながら今の日本には仕事を生きがいにしている人は殆どいませんし、何かしら不満を抱えながら仕事をしているわけです。そんな客が何でも話せる環境を作ってあげる、という価値が営業としては残り続けるのではないかと思います。また、一緒に働いたことでなし得た価値を共有することは、顧客のみならず自分自身にとってもいい思い出になるはずです。
そんなの非効率極まりないと思うZ世代・α世代の若者が増えているところだと思いますが、少なくとも対面営業の効果を理解し、優先順位がつけられるようになると良いと思います。
さいごに
どこまで参考になるかわかりませんが、自分なりの正解を見つけて頂ければと思います。結局客と仲良くなった方がいいのかですが、仲はいいに越したことはありません。但し、何でも言うことを聞くのはやめましょう。
何でも聞く人より、自社のことを考えてできないことをできないと言える人の方が長期的に信用されますし、結果がでます。仕事は手強いけど人間的に魅力があって一緒にいて面白いな、と思われるのが究極の営業パーソンだと思います。
信念をもってやったことであれば社長でもない限り上司が助けてくれるので大丈夫です。思いっきりやってくだい。