香港での授業も残すところ4科目となりました。
少し時間を持て余してしまったので、教授にお願いして登録外の選択科目も聴講させてもらっています。リーダーシップの授業に加え、プログラミングの授業も始まり相変わらず刺激的です。MBAの必修科目で機械学習の実装をするとは思っていませんでした。
さて、今回はちょっととりとめのないテーマを扱います。倫理の世界で有名なマイケル・サンデルの書籍などで馴染みある方も多いかもしれません。
突然ですが、皆さんは何のために生きていますか?お金のため?家族のため?社会のため?昨年、このテーマについて洞察を深める授業(Business Ethics)があり、良い機会なので整理したいと思います。
個人的には、人生は思い出づくりであって意味はない、と思っています。言い換えると、楽しい思い出をつくって幸せに死ねたら最高の人生ではないかと。
では、幸せとは何でしょうか。
お金の限界
お金が全てだとか、全てじゃないだとか、こんな話が日常に溢れています。因みに、私はお金持ちになりたいと思っています。家族により良い衣食住をしてもらうのが自分にとっての幸せだからです。
実際、世の中の喧嘩や争いはお金があれば解決することが殆どです。お金があれば家族や社会に貢献ができ、いい思い出をつくって死ねる、というのは一理ありそうです。
その一方で、一生働く必要のない富裕層の大半が幸せを感じていない、というデータがあります。
例えば、稼ぐために家族や健康を犠牲にしてきた人、あらゆる贅沢が日常となり何をやっても楽しいと思えない人、自分が特殊な人間であると勘違いして世の中を見下す人など、お金に支配されてしまった人たちは不幸になるばかりです。
彼/彼女らには何が足りなかったのでしょうか。
倫理の重要性について
ここでMBAの授業に戻ります。
そもそもビジネススクールの目的は何でしょうか。将来自分がお金持ちになること?株主に喜んでもらうこと?
それぞれのMBA Journeyがあっていいと思うのですが、設立側の意図は、社会における役割をきちんと理解したリーダーを育てることです。然しこれを実践できる卒業生がどれだけいるのか心配になることがあります。
例えば、ハーバード大学の卒業生の多くは離婚を経験しているようです。トップスクールを卒業しても仕事の成功と引き換えに、人生における戦略は思わぬ方向に進んでしまうようですね。
マズローの欲求5段階説によれば、人間とは社会的に認められたあとは自己実現の世界を追求していくようですが、そもそもそんな高度な欲求を持たなければもっと幸せに暮らせるのかもしれません。
イノベーションのジレンマの著者としても有名な実業家/経済学者のクレイトン・クリステンセンは講演の中で、お金では買えないものを大切にする必要があるという理論を紹介しています。
私たちの家族への投資は、非常に長い間報われません。そして、人間関係に投資するとき成果は手元にありません。
しかし、例えば、企業が失敗する理由は、最も直接的で具体的な証拠を提供するものに投資することであり、そのような短期的な尺度しか持たない理由は、企業が人間によって構成されているからです。
次に、私たちの個人的な生活に同じ思考プロセスを適用し、悲しい結果をもたらします。
改めて、倫理を欠く成果の追求は人生の価値を台無しにしてしまう可能性が高いことに気づきます。
授かった才能について考える
クリステンセンは続けます。
私の人生の終わりに神と話をするとき、神は私が組織でどれだけ偉くなったとか、どれだけのお金を残したか、という話はしないでしょう。
寧ろ、神が私に与えた才能を使って私が助けた人たちの話がしたいというでしょう。その人たちは家族、もしくは職場の仲間たちであったはずです。
そして、それが私の人生を測る方法であることに気づきました。
確かに人は、それぞれが違う才能を持っているからこそ助け合い、進化をしてきたのかもしれません。
然し、時に人は才能の使い方を間違えます。例えば、独裁者は生まれつき恵まれた才能や機会を与えられたにも関わらず、自分のために権力を乱用し、人々を苦しめます。
他方、才能とは希少性であると捉えるならば、障害者でさえパラリンピックやメディアなどで活躍し人々を励ますことができます。五体不満足の著者である乙武 洋匡さんは、一生暮らせるお金があるにも関わらず、自分が稀有な身体を与えられた意味を考え、多くの人に希望を与えていきます。
人は欲しい才能を選べませんが、与えられた才能の使い方を選ぶことができます。それが神様の興味であり、幸福を感じられるか否かを左右するのかもしれません。
さいごに
人生の価値というテーマについて考えてみましたが、倫理なしに最短ルートばかり追い求めていると落とし穴に嵌りそうですね。
振り返ってみれば、日本には幕末、心の底から日本を変えようとした志士たちがいました。彼らは決してお金持ちでもなければ寧ろ貧しく、その殆どは若くして亡くなってしまいました。
然し、お金でも地位でも名誉でもない、一生かけても達成できないほどの高い志を持ち続けていたからこそ、彼らの人生は尊く、今も人の心を動かし続けるのだと思います。
最後に、今回の授業を通して以下の4つを今後の指針として行ければ良いかな、と思っています。
(1)家族と一緒にいること
(2)時間やお金に支配されないこと
(3)楽しく、刺激的に過ごすこと
(4)社会に良いインパクトを与えること